弾けば弾くほど下手になる
10年後の自分なんて想像もつかなくて、初レッスンに持って行った曲は ベートーヴェンのメヌエット ト長調で、最初っからめちゃくちゃ指導されて、それからすぐにバーナムが始まって、衝撃の連続だったのだけど。
それから2年後ツェルニー30番をやることになって、それが8年もかかって、その間中ずっと、ドレミファソラシドすら満足に弾けないんだなあ、右と左の音を同時に拾うこともできないんだなあと、思い知らされてきたのだけど。
でもいくらなんでも、ずっと続けて10年もたてば、絶対にピアノがうまくなるんだと、信じて疑わなかった。
だって、10年と言えば、憧れているけど夢の曲、例えば幻想即興曲などを弾けるようになるかもしれなかったからだ。
そういう曲を弾けるようになるということは、いわゆる「ピアノがうまい」状態になっているのだと想像した。うまくなりたい、その一心で練習した。
そして、シューマンのアラベスクとトロイメライを練習するようになると、
「弾けば弾くほど難しく感じる」ようになった。なぜだか分からないけど、そうなのだった。
今ブラームスの118-2を練習していて、「弾けば弾くほど下手に感じる」。
どうしてかはわからない。理由をわたしが聞きたいぐらいだ。
この間患者さんに言われて印象に残ったこと。
「やりたいことがたくさんあるうちは時間がなくて、時間がたくさんできると、今度は体が動かない」。
聴ける耳ができるようになったら、今度は弾けなくなるんだろうか。
・・・そんなのは悲しいな。
でももしもそうなったら、
わたしは、若くて頑張る人を応援する人になりたいなあ。
今、力をもらっているように。