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バスの告白

「でもなんで、赦されるって歌詞にしたの?」

シンフォニア11番の練習が終わって、帰り支度をしていると、唐突にアルトがバスに質問した。


「わたしも思ってた。・・でも聞いちゃいけないかなって思って、さ。」


ソプラノも続いた。



アルトとソプラノが疑問に思うのも無理はない。


バスは、どこからどうみても、絵に描いたような、順風満帆な人生なのだ。


裕福な家に生まれ育ち、小学校では塾に通いピアノを習っていた。


当時は、女子ではピアノを習う人は珍しくなかったが、男子は違う。バスはあきらかに他の男子達とはその頃から何か違っていた。




確か、バスのお父さんは学校の先生で、お母さんはピアノの先生だったはず・・・


すごく大きな家で、門から玄関までずいぶん歩いたんだっけ・・


アルトは小学生の時に一度だけ、風邪で練習に来れないバスに楽譜を届けたことがある。


記憶の中のお母さんはとてもきれいな人だった。髪は長くパーマがかかっていていい匂いがして、玄関には薔薇が飾られていた。


アルミの大鍋でちくわの入った煮物を作る、割烹着の自分の母親を恥ずかしく思ったほろ苦い気持ちも、一緒に思い出した。


人には、誰でも話したくないことがあるものね・・・これ以上聞くのはやめよう・・


そうアルトが思っていると、バスはあっさりと答えた。


マスクをしているので、笑っているのか怒っているのか分からないような平坦な口調だった。




「うちの親、毒親ってやつなんだ。」



「えっ?」


「毒親?」


「なにそれ」


ソプラノとアルトは思わず顔を見合わせた。




「昔は分からなかったんだよな。昭和ってそんな時代だったのかもだし。毒親って言葉を知ったのも最近でさ。


でも、中学も、高校も、大学も、自分では決められなかった。決めたのは親父なんだ。逆らうことはできなかった。


学費も出してもらうし、行きたくても行けない人もいっぱいいるだろう。俺は恵まれてるほうだって、当時は思ってたんだ。


ピアノも、やりたくて習っていたわけじゃない。お袋が勝手に決めたんだ。嫌だとか、言った記憶はあるけど、聞いてもらえるような家じゃなかった。」




バスは一流大学を出て一流企業に就職したのよね・・・


確か今、部長っていってなかったっけ・・・


黙って聞きながらソプラノは、一度だけ見せてもらった、きれいな奥さんと子供の写真を思い出していた。


親の敷いたレールでも、幸せなんじゃないの・・・?




「俺は、家を捨てたんだ。」




「えっ?どういうこと?」


「断絶っってやつだよ。」


「・・・いつから?」


「子供が生まれてから。もうずっと実家に帰ってないし弟にも会ってない。」


「・・・そうなんだ・・・」


「うちの親たちは、二人そろって、精神的虐待っていうのかな。そういうやつらでね。見えないだろう?でもそうなんだよ。・・・俺は、弟に全部押しつけて、逃げ出したんだ」



3人は、コートを着て手にバックを持って帰ろうとして立ち上がった、その時のままだった。



続く。(続くのかな?(^_^;))




妄想にまみれていても実際はそのように歌えない今日の11番↓


4分の3拍子と8分の3拍子の違いがよく分かりません(;´Д`)



参考までに~以下過去記事です↓


シンフォニア2番のソプラノの気持ち


シンフォニア3番でのアルトの主張


シンフォニア15番 3人が登場した最初の記事


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MINDY
2022.01.31 Mon 09:45

すごい展開になっていますねー。この先、何が起こるんでしょうか。そして、シンフォニア14番で完結するんでしょうか!

11番、私は具体的なストーリーは出てこないですが・・・1ページ目でなんとなく話が終わるかと思いきや、2ページめ(第二部)の冒頭で突然バスがしゃべりだし、しゃべりが止まらずに昇りつめて曲のクライマックスへと導かれる感じは、私も弾いていて表現したいな、と思ってました。これが「バスの告白」だったんですね!!早く続きが知りたいですぅ。

ねこぴあの

MINDYさんへ

ねこぴあの
2022.02.19 Sat 14:56

※すみません一部間違いがあったので修正しますm(__)m

シンフォニア14番で完結・・・・単なる思いつきなので、考えてもみませんでした(笑)

>2ページめ(第二部)の冒頭で突然バスがしゃべりだし、しゃべりが止まらずに昇りつめて曲のクライマックスへと導かれる感じは、私も弾いていて表現したいな、と思ってました。

わかります!ここ、気持ちが盛り上がりますよね。
でも師匠が言うには、ここはゲームで言うなら中ボスで、ラスボスは63、64小節だそうで、そこがこの曲のクライマックスだそうです。

>これが「バスの告白」だったんですね!!

この曲の歌詞はすでにつけてしまっているのですが、何を告白しているのか、その時点ではわかりませんでした。
でも、なぜか譜読みの最初からバスが重要で、単にきれいな曲ではない、と思いました。心の深淵に触れるような?バッハの短調はそういう感じが多いような気がします。

こんな妄想なのに、続きを楽しみにしてくださり、ありがとうございます!