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アルトの成長

アルトはずっと自分を好きになれなかった。



地味な顔立ち。

おとなしく引っ込み思案な性格。

声が低く小さいため、合唱ではいつも先生からもっと声を出すよう言われた。




家の中でも声の大きい弟に負けてしまい、

話も上手じゃなかったし、

忙しいお母さんは弟に目が行っていたし、

母子家庭のお母さんに迷惑をかけちゃ行けないと思ったし、

言いたいことを、ひとつ、またひとつと、飲み込んだ。



中学へ行くと、好きな人が出来た。

ドキドキしながらバレンタインのチョコレートを買った。

でも下駄箱の陰で偶然聞いてしまった。

「アルト~?暗いからやだよ。眼鏡だし。」

チョコレートは弟が喜んで食べていた。

「アルトはチョコをあげるような好きな人いないの?」

お母さんの顔を見たくなかった。




家が貧しかったので、塾には行かず、家から通える国立大に進学した。

周りがおしゃれしてるときも、安い服を着てバイトをした。

大学でも恋人が出来ず、就職した。

もう諦めていたときに、今の伴侶と出会った。

口数は少ないが、誰も見ていないところで他人を助けるような優しいところに惹かれた。

彼の前では、自分のままでいることができた。





最初の子供は1歳のときに亡くなった。

自分はなぜ生きてるのか、分からなかった。

どれほど泣いても涙が涸れなかった。

それでもお腹がすくのが不思議だった。

もう2度と子供は持たない、そう思ったが、2人目を産んだ。女の子だった。

嫌になるほど自分に似ていた。

けれど夫婦で、可愛くて可愛くてたまらなかった。

おとなしい気質も、口下手なところも、欠点とは思えなかった。

月日が過ぎ、子供は大学を卒業し家を出ていった(その子離れの寂しさがシンフォニア3番の歌詞に)。




仕事はずっと続けた。

研究職は、性にあっていた。

自分で書いた文章を読む論文発表は、よく分からない人とその場限りの雑談をするより、ずっと楽だった。

声が小さくても、マイクがあった。




アルトはいつの間にか、自分を好きになっていた。




人は誰でも役目を持っている、生まれた意味のない人間なんて1人もいない、

わたし自身がかけがえのない大切な存在、

人は誰でも唯一無二の命だと、思うようになっていた。








「わたし、どうしても歌いたいことがあるの」

いつもの練習のあと、唐突にアルトが言い出した。

「わたしの歌にしてもいいかなあ」




そうして持ってきたのがシンフォニア14番だった。


ソプラノのよく通る美しい声と比べると、華がない、けど優しいアルトの声を聴きながら、

小学生の時のアルトをバスは思い出していた。→その時の記事



アルト、よかったなあ・・・・




バスは、自分が心の中でアルトを応援していたことを誰にも言わなかった。

嬉しさでなんともいえない気持ちになりながら、




シンフォニアはあと2曲しかないなあ・・・

胸の奥で寂しさも感じていた。






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NekoUshi
2022.11.10 Thu 12:03

14番は間違いなくアルトの曲ですよね。
あの響きは他に考えられません。

アルトさん、ソプラノさん、バスくんの3人の波乱万丈の物語。
ドラマ化してほしいです。マジで見たいんですけど!!←興奮し過ぎてギャルっぽい喋り方になった(笑)
タイトルは『しんふぉにあ』で。片仮名じゃなくて平仮名がいいですね。
キャスティングは、え~と(意外と難しそう)。夢が広がるわ~~

いつの間にかシンフォニアはあと2曲なのですね。
子育てを終えたアルトさんの寂しさと重なりますね。

ねこぴあの

NekoUshi さんへ

ねこぴあの
2022.11.10 Thu 22:09

今楽譜を見てきたのですが、シンフォニアでアルトから始まる曲は4曲のみ、そのうちの1曲が14番でした(バスからなぜ始まらないんだろう?)。
アルトの曲だと思いますか?^^

>興奮し過ぎてギャルっぽい喋り方になった(笑)

(笑)(笑)
ドラマ化~

ソプラノだと誰かしか出てきそうだけど、アルトだと思いつかないです。

シンフォニア2番でのソプラノの決意(http://nekopiano115.blog.fc2.com/blog-entry-1945.html)、
シンフォニア11番でのバスの告白(http://nekopiano115.blog.fc2.com/blog-entry-2087.html)、
このあたりが残っている7番と9番で明らかになるのか・・・?
これを書いている本人にも分かりません^^;

  

MINDY
2022.11.11 Fri 14:32

NekoUshiさんに一票!ドラマ化賛成です!
私は「シンフォニア」っていうタイトルで、加筆せずに今までブログに載せたままそのまんまで本にしてもいいんじゃないかと思います!マジで。この歳(アラカン)になって友達といろいろ語りながら思うのですが、世の中フツーの人生なんてないんですよ。みんな、唯一無二の複雑な人生を歩んでいます。でも、特別な人生(芸能人のような)を生きているような気もしないんです。その、フツーでフツーじゃない感がねこぴあのさんの物語にちゃんと現れててすごいと思います。

ぜひ、本の出版、漫画化、ドラマ化など、いかがでしょう?

bonbon
2022.11.12 Sat 07:16

ジーンとくるお話…。普通に暮らしているようでも色々と心には葛藤がありますよね。
結婚して出産して、家庭に仕事。大切な人との別れ…。忙しさで日々が過ぎていく中で子供が巣立ち、ちょっぴり空虚になって自分を見つめ直して。
そんな物語がシンフォニアを通じて感じられるなんて素敵。
ねこぴあのさんの感性って、同じ女性としてウルウルと感動しちゃいますよ~。
いつもありがとうございます♪

きなこ
2022.11.12 Sat 12:21

えぇー???ねこぴあのさんのブログ?
もしかして限定記事を公開記事と間違っておられるのでは?

なーんて、何回も思いながら読ませていただきました^^;

限定記事は私自身書くのをやめてしまったため、基本どなたの限定記事も拝読していないのです。

おっと違いました!
アメブロの方で、昔から繋がりある方がオール限定記事、限定記事多めなのですが、その方々はいました。


それにしてもシンフォニア14番♪
なんて哲学的な素敵な曲なのでしょうか!

先生が「ときめく様なアルトのメロディでしょう?」と言われたのを思い出しました。

アルトから始まるシンフォニアは、4曲しかないのですね?!初めて知りました。

それとお子様のこと
悲しいご経験をなさったのでしたか…
お辛かったですね(;_;)

ふられた経験?私なんて何人振られたか?覚えてないくらいですよ。
あと、美人友達と2人で歩いていた時ナンパされると…「この子(美人さん)だけね、君(私)はいいので」なーんて失礼な事言われたり。
若いって残酷でした 笑笑

でも素敵な御主人様と2人のお嬢様にも恵まれて、お仕事も頑張っておられて、文才おありだし、何より前向きで…ねこぴあのさんは一生懸命で健気です。

どうかピアノと共に、素敵なお茶目な「バッハおばあちゃん」になって下さいね。

ねこぴあのさんとても素敵な女性です♡

ねこねここねここたつでねてる
2022.11.13 Sun 18:21

アルトさんのような人生、送りたかったな~! いつの間にか自分を好きになっていたというのがとっても素敵です。

ねこぴあの

MINDY さんへ

ねこぴあの
2022.11.14 Mon 16:38

MINDY さん、お返事が遅くなってすみませんでした!

>みんな、唯一無二の複雑な人生を歩んでいます。でも、特別な人生(芸能人のような)を生きているような気もしないんです。その、フツーでフツーじゃない感がねこぴあのさんの物語にちゃんと現れててすごいと思います。

そうそう、みんな何かしかある、
そもそも人間は醜い面も持っている生き物だと思うんですよ。
けど、この14番は、そうした諸々を全部包み込み天に召されるような曲だと思うんです。
フツーでフツーじゃない感!わあ嬉しいなあ。
演奏もそのように弾けるともっといいのに・・・^^;

ねこぴあの

bonbon さんへ

ねこぴあの
2022.11.14 Mon 16:42

bonbon さん、お返事遅くなりすみませんでした!

>結婚して出産して、家庭に仕事。大切な人との別れ…。忙しさで日々が過ぎていく中で子供が巣立ち、ちょっぴり空虚になって自分を見つめ直して。

キリスト教のことも、バッハが何を考えこの曲を作ったかも分からないですが、曲に投影される内容は、等身大の目線になってしまいました。

>ねこぴあのさんの感性って、同じ女性としてウルウルと感動しちゃいますよ~。

そんな風に言ってくださり、ありがとうございます。
歌詞が浮かぶことも、妄想も、実生活には何一つ役に立たないのですが、救われます。
ピアノがあって、ブログがあって、よかったなあ~・・・。感謝です!

ねこぴあの

きなこさんへ

ねこぴあの
2022.11.14 Mon 16:50

きなこさん、お返事が遅くなりすみませんでした!
これは限定ではなく公開ですよ~
そしてアルトはわたしではありません、妄想ですので、念のため^^;

>先生が「ときめく様なアルトのメロディでしょう?」と言われたのを思い出しました。

わ~先生いいことおっしゃいますねえ~
アルトから始まる、優しい優しい、アルトの曲なんですよねえ。

友達と2人で歩いてて友達の方ばかり声をかけられる、わたしも経験ありまくりですよ!
バレンタインのくだりは、自分の経験を少し変えています。ほろ苦い思い出。
そんな感じで妄想は、実体験がひねられた形で出てくることが多いかも。そのまんまってことはあまりないです。

>素敵な御主人様と2人のお嬢様にも恵まれて、お仕事も頑張っておられて、文才おありだし、何より前向きで…ねこぴあのさんは一生懸命で健気です。
どうかピアノと共に、素敵なお茶目な「バッハおばあちゃん」になって下さいね。

わ~そんな風にとらえてくださり、恐縮です!
わたしはどこにでもいる、じみーなフツーのおばさんです。
文を書くのが好きなのでブログを書き、たまたま読んでくださる方がいて、という感じなだけで。
だからつまり、みんな同じだと思うんですよ。
ピアノとともに、きなこさんもいられますように!





ねこぴあの

ねここたつさんへ

ねこぴあの
2022.11.14 Mon 16:53

わたし自身が、ずっと自分を好きになれずにいたんです。
だから自分のピアノも好きになれませんでした。

自分を好きになれないのって、少々の小雨が降ってるみたいな感じで、
たいして影響がないようでいて、長くなるとびしょびしょになってしまい、身動きがとれなくなるというか。

ねここたつさんに、幸せがたくさんありますように!